今の世の中、ポートフォリオといえばwebサイトやSNS上で見せるのが基本。紙で見せるポートフォリオってどうやって作るんだろう?と調べてやってみました。
紙で作るポートフォリオの良さや実際の料金、意外とハードルが低かった話をしてみたいと思います。
実際作った八朔堂のポートフォリオも公開しますので、ご覧になってもらえたら幸いです。
ポートフォリオを紙で作りたいと思った漫画描き(初心者)が調べたこと
ポートフォリオは小部数でも印刷所に頼める
何か印刷所に頼むと100部単位で大部数刷らなきゃいけなくなる!……という、うっすらした知識しかなかった私。
同人誌は部誌で作ったり友達に寄稿した(発注は別の人がした)ことしかなく……、自分の作品を印刷所に注文する気は最近までほぼゼロでした。
でもラクスルなんかを見てると私の認識と違うんです。
名刺作りをした時、検索結果に少ないページ数の冊子を小部数発行するのにも対応してくれる印刷所のPRがあって気づきました。
紙の同人誌を作る気はなかったんですが、別のことを思いつきました。
そう、ポートフォリオ制作のことです。
私は若い頃、漫画を描いたら出版社に持ち込みをして直接アドバイスをいただいたり、アシスタント先を紹介してもらったりしていました。積極的だとかコミュ強とか作品に自信があるからではなく、忘れっぽいからです。
鉄は熱いうちに打てというじゃないですか。原稿を送って待つのは性に合わなかったのです。返事が返ってきた頃には別のまんがを作ってるし、送ったマンガにはもう冷めてしまっているし、何描いたか忘れてる。
昨今はネットの利用で、反応はすぐ返ってくるし、絵や画像の仕事をする人は対面の営業をしなくていい風潮になっています。でも出来れば前みたいに、直接出向いてリアルでお仕事もらいに行くみたいなことが出来たら、可能性が広がっていくような気がするな……、と思っていました。
で、そのために必要になってくるのが「名刺」と「手に取れるポートフォリオ」です。なかなか腰が重かったのは以下の懸念があったからです。
コンビニプリントは1枚50円、印刷代だけでも仮に20p作るなら550円。綴じる手間、大きいホチキス、クリアファイルを購入?……うーん。
あまりコスパいいとは言えず……印刷用の小銭用意するのも大変だし、大量の印刷は他のお客の迷惑になる……。ということで自分で印刷はあまり気が乗りません。
1, 2については、印刷所によっては大丈夫らしい?と判明しました。検索結果を見ると、「1部からでもOK」という見出しがいくつかあり、全ページフルカラー、20pを想定した場合の料金を見てみることにしました。候補になったのは以下の印刷所です。
同人誌印刷のペンタロー
「1冊から激安中綴じ」プランがある。8〜40pのパンフレットタイプの冊子を作れる。基本の印刷がCMYK印刷(パソコン上の色味より地味)になる。
しまうま出版
「商品バリエーション/イラスト」プランで小部数冊子に対応している。12〜144pのフルカラー無線綴じ冊子を作れる。7色印刷や巻カバー、コート紙の選択でグレードアップが可能。
どっちにしようかな?
ポートフォリオ発注数の決め方と、一冊あたり料金
ページ数はあまり多くする意味がないと思い、仮に20pと決めて見積もりを出してみました。部数の決め方ですが「実際自分が出向いて話せる人数」、と考えたら、5人も会ったらヘトヘトなのが想像できます。
①手元に置くぶん
②誰か奇特な知り合いが「欲しい」と言い出した万一のぶん
③余っても困らず、読者様に抽選プレゼント企画すれば捌ける
ということで、10冊と決めました。
あとうっかり者なので、絶対何か記載ミスをして印刷後に修正が必要になったりする未来が予想できるんですよね。また新しく作り直せばいいやと思える数くらいがちょうどいいんじゃないかと。
見積もり結果
①ペンタロー
②しまうま出版
A5フルカラー(20p)×10冊の見積もり料金
ペンタロー・・・2640円(送料無料)/1冊の価格 264円
しまうま出版・・・5000円(送料別)/1冊の価格 500(+α)円
ペンタローの方は納品日を6営業日後に設定することで安価に済ませられました。また、届け場所が一ヶ所で済む・お急ぎ便を選択しないという条件で送料も無料になるとのこと。
しまうま出版は高級感ある紙面作りに魅力を感じましたが、こんな初心者の無名絵描きが品質に拘ってもな……、ということで見送り。
もっと品質にこだわってもいいくらいの腕になってから、高級感を追求することにします。
デジタルでいいと思ってたポートフォリオ、必要になった理由
営業しようかな、した方がいいのかな、というぼんやりしたビジョンが明確になったのは、「クリエイターと企業の交流イベント」なる告知のバナーが、投稿先を探している最中に目に入ったからです。
- 2024年11月29日(金)、30日(土)の両日開催
- 10:00~16:00 The CREATORS 日中イベント Supported by エクストリーム
- 17:30~20:30 The CREATORS 懇親会 Day1 Supported by インティ・クリエイツ
場所 秋葉原
コンセプト 「企業とクリエイターが繋がれる場」
日中/参加費 2000円
夕方以降懇親会/参加費 8500円
営業する時に一番苦労するのが、まずアポイントメントを取ることです。持ち込み今は受け付けてませんと門前払いされる心労、返事待ちの間に複数箇所にアポ取りしてバッティングしないよう予定を幅広く空けておかなくてはいけません。
同時に一か所でウェルカム状態の企業さんが…なんて優しい催しなんだろう!!
しかもとても規模が大きい……私がお世話になっているDLsiteさんや、大手のマンガサイト、出版社もたくさん出展してくれます。これは行ってみなくては!と感じました。
非常に個人的な理由ですが、子育て中の身なので、家から近いのと日中のイベントだけの参加が安価で済む、という部分が決め手でした。娘の寝かしつけ(寂しがって本を読まないと寝ない)が出来ないと困るんですよ……。
まあ、申し込み後に抽選や審査があるイベントなので実際参加できるとは限らないんですが……、もし落ちても、名刺やポートフォリオが手元にあることで行動のきっかけになると思って作っています。
ポートフォリオ印刷データ作成ソフトの選択
ポートフォリオの印刷をお願いする印刷所は決まった、さてじゃあポートフォリオ画像の作成。紙面、データをどうやって作るか?が問題です。
画像作成ツールは色々あるけれど、ポートフォリオ制作の場合「1枚の画像を作り込めばいい」というものではありません。
20p全体に統一感を持たせ、必要な情報が足りない部分はないか、俯瞰しながらバランス調整できる機能。画像だけでなくテキストをデザイン的に配置できる機能も必要です。
先ほど挙げた印刷所発注の際の、3, 4, のハードルですね。
(余談)私はガジェットおたくの気があり、使いやすいツールやソフトを探して比較したり使い込むのが割と苦になりません。(だからマニアックなクリスタのブラシも片っ端から試して詳しくなったのです)
比較検討については長くなるので、別記事に記載しますが……。ソフト選びは正解でした。
紙面を一冊に「作品」としてまとめ、「印刷所発注」データとしてサクッと作れるソフトは「Adobe InDesign」しかないのではないかと……。
テンプレなしの状態でまっさらな画面から作り出したのですが、数時間で満足できるポートフォリオが出来ちゃいました。
しかもトンボありなしも書き出しの時に選べて、印刷所のフォーマットデータを使う手間も必要なし。
残念ながら有料のサービスですが……お安くできる方法も(裏ワザ的なやつググると出てきます)あるので!
まあでも絵や画像のプロになるならこの辺のツールはうまく使う必要がありますし、投資と思って駆け出しの頃から慣れておくのもありなんじゃないかなって。
紙のポートフォリオ作り未経験者がやってみた結果 (ポートフォリオ見本あり)
作成したポートフォリオの画像がこちらです。
(ギャラリー表示するとなぜか色味が元画像と変わってしまい、ピンクがかって見えてますね)
ブログの最後にPDFデータをつけたから、正しい色味で見たい人はそっちをどうぞ!
【ポートフォリオ作りで注意したこと】
○漫画とイラスト、両方載せる
○イラストには解説を入れる
○マンガには解説を入れず、前提知識は最低限でいい作品を掲載
○無理なことは書かない、目標や目指すことも今回は入れない
○事実のみ記載
○ポートフォリオに名刺をホチキスで留めて連絡先の情報をカバー
(重複する情報がないようにする)
今回のような売り込み?は初めてなので、自分の首を絞めそうな背伸びした情報は無理に載せないことにしました。
やってみた結果……
思ったより簡単
安価
時間もかからなかった
客観的に自分の絵を見れた
充実感
自信がついた
難しくなかった!というのが率直な感想でした。
ポートフォリオ作成を紙でするメリット
ポートフォリオサイトの欠点を補う、紙のポートフォリオ作り
紙で手に取れるポートフォリオ作りを実際やってみて、思った以上のメリットがありました。
「初対面の人に見せる」ということを前提に、自分の作品をアピールする目的で自分の情報をまとめる、というのは意識しないとやらないものです。
Webサイト上のポートフォリオってどうしても散漫になりがちです。
ポートフォリオサイトでありがちなこと
○最初は厳選しても、慣れてくると作った端から載せてしまう
○以前からのファンと初見のファン、通りすがりの人、どれもターゲットになり目的が絞れない
○落書きっぽいものや、wipも混ざってくる
○文章と絵が別で、必要な情報が一目で入らない
(気になる画像クリック→解説を読むひと手間がある)
○画面や色合い、画風に統一感がなくなってくる
一冊にまとめたポートフォリオは自分の一番いいところをギュッと詰めた統一感のある作品なので、アピールにはもってこいです。
これを一番目につくところ……Xならプロフィール下にピン留めしたり、リットリンクに置いたり、自サイトのギャラリー表示トップに持ってきたりすれば、初見の人のアンカーとして機能してくれますよね。
お仕事依頼考えてて、一発でどんな人かわかります!的な情報が欲しい方に届きやすくなります。
ポートフォリオのデータをWebサイトで活用
初心者の方用に解説をすると、紙のポートフォリオ用に作ったデータはその目的のみにしか使えないわけではありません。
ポートフォリオ印刷のデータファイルは、PDFが基本になります。
印刷所によって、有名なソフトのデータ形式を受け付けている場合もありますが、まちまちです。
(Illustratorで作ったデータはaiとか、Photoshopならpsdとか、クリップスタジオのclipなんかは受付する印刷所が多い)
どこの印刷所でも使えるデータ形式はPDFになりますし、作る方も大体のソフトでPDF書き出しは出来るようになってるから、初心者はPDFでデータを提出するのが楽でしょう。
その場合、たいていの画像作成ソフトは png、jpgの書き出しもできるようになっています。その機能がなくても無料で変換できるクラウド上のサービスがあります。
どうせ作ったなら、そのデータをサイトでも有効利用すればいいわけです。なんなら別に印刷しなくてもいい。
営業する気がなくても、初見の人が手に取る前提で、意識して画像を作ってWebだけで利用するのもありだと思います。
ポートフォリオを作ると自信がつく
一冊のポートフォリオを、限られたページ数の中で作ってみたら、思った以上に気分が上がりました。
いい部分だけ厳選=見てて嬉しくなる
自分の能力を客観視する機会になる
強みがわかる
お手軽に「作品」を完結させられた満足感が得られる
自分の進歩が目に見える
漫画もイラストも完成までに時間がかかります。
でもポートフォリオ作りは今までの総決算なので、リサイクルで新たな作品を生み出せて、創作の楽しみを味わえます。
自分が過去に苦労して生み出した作品に、お化粧し直して再び陽の目を見せてあげられます。
自分の作品に真摯に向き合ってどう活かせるか考えるのも、自信をつけたり気分をあげたりするのも、全部クリエイターには必要なことです。
たった20pのポートフォリオを作っただけで、色々なことを体感した1日でした。
ここまで読んでくださった方に、ポートフォリオのPDFデータを進呈します!
ぜひ参考になさってください。
https://hassakdo.com/wp-content/uploads/2024/10/ウォーターマーク八朔堂ポートフォリオ改.pdf
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